デジタル経営戦略

つながりがスマート化する社会を実現するソーシャルデザイン

「Connect」が変える社会システム

日本資本主義の父と言われ、多くの企業・組織の設立や社会公共事業に携わった渋沢栄一は、事業においては公益を追求する道徳と利益を求める経済が両立すべきであるという「道徳経済合一説」に基づいた社会システムのビジョンを描きました。

この渋沢のビジョンは、現代においては「安心して快適に充実した暮らしができる社会を、経済活動を通して実現する」ことになると、私は考えています。お互いが信頼でき、多様な考え方が共存し、絶えず学び続け発展する社会。それを、最新のデジタル技術を活用して実現していくというのが、これからの社会システムの構築ではないでしょうか。

図1:目指すべき社会のビジョン

デジタルによって、社会を構成する個人・企業・行政の「つながり(Connect)」は変化しつつあります。その現状と、その先にある新しい社会の実現のために必要なこと、そこでのNTTデータの取り組みについてご紹介していきます。

「足し算のデジタル」から「掛け算のデジタル」へ

これまでのデジタル化は、「足し算のデジタル」でした。例えば、商品販売にECを導入したり、事務処理をRPAによって自動化したりするなど、ビジネスの現場(フィジカル)にデジタルを追加することで、フィジカルの効率化を進めてきたのです。
そこに、さらなるデジタルを掛け合わせ、フィジカルの世界に変革をもたらし新たな価値を生み出す「掛け算のデジタル」が、これからのデジタル化です。

図2:掛け算のデジタル

センサー技術や5Gによる常時接続などにより、あらゆるものがつながり、より多くのフィジカルデータを収集することが可能になります。それをデジタルで分析し、フィジカルに戻して活用することで新たな価値が生まれるのです。
例えば、NTTデータもトヨタ自動車とコネクティッドカーの実証実験を進めていますが、自動車に取りつけた複数のセンサーによって収集したデータを分析し、事故や障害物のリアルタイム検知、渋滞予測、地図データの随時更新などを行い、その情報を各自動車に配信することで、安全でスムースな運転が可能になります。
自動車というフィジカルとデジタルがインタラクティブに融合することで、新たな価値が実現するのです。

ライフジャーニーの課題解決を起点に

これまでも、デジタルによってコスト構造・ベネフィット構造が変化し、利用者の情報入手にかかるコストや供給者のコンテンツ再生産に係るコストの低減など、利用者も供給者も共に多くのメリットを得てきました。
「掛け算のデジタル」では、利用者はより”パーソナライズ”された情報を受け取れるようになり、利便性が一層高まります。供給者にとっても、より多くのデータが取得できるほどデータ取得コストは下がり、より多くのデータを分析することで予測の精度が向上する、というメリットを得られるようになります。これまでとは異なる経済原理に基づいたコスト・ベネフィット構造が生まれるのです。
提供者が「掛け算のデジタル」によるベネフィットを最大限に得るためには、新たな経済原理が働くということを理解し、需要者の真の課題を起点としたトータルなアプローチの設計を行う必要があるでしょう。

例えば、小売企業がECの導入や、レジの自動化・キャッシュレスを促進しても、顧客の課題の一部を解決するにすぎません。顧客は何のために買い物をするのか?その目的を達成すべきための課題は何か?と考えると、家族構成や好みにあった献立の提案から材料の購入、自宅への配送まで一貫したサービスが必要とされるのではないでしょうか。

行政でも、各種手続きの効率化のための行政ポータルやオンライン申請の導入などを進めるだけではなく、市民の課題から考えることで、例えば子育てに関わる様々な申請や手続きを一元的に行えるようにし、さらにパーソナライズにより必要なタイミングで保育園サーチや予防接種のリコメンドが届くようなシステムを構築することができます。

このように、個人・企業・行政のそれぞれのつながりの中での課題解決を起点としたサービスが求められますが、生活者は、市民であり従業員であり、消費者でもあります。一元的にパーソナライズされたサービスを受けることができれば、そのベネフィットは飛躍的に高まるでしょう。そのために、提供者側である企業や行政に求められるのは、生活者のライフジャーニーの課題をトータルに解決するという視点からの、サービスデザインです。
企業・組織内にとどまらず、業界の垣根を超えた連携や、トランスボーダーでのサービスを提供していくことで、生活者のベネフィットはより高まり、提供者側はよりカバレッジを広げ、多くのデータを取得活用することでコスト効果やサービス高度化のベネフィットを得ることができる。それがデジタルの経済原理に基づく循環につながっていきます。

図3:ライフジャーニーの課題解決を起点とするアプローチ

<NTTデータが目指すソーシャルデザイン>

日本は、高齢化、少子化とそれに伴う人口減少、脱炭素・省エネルギーへの対応など、解決しなければならない様々な問題に直面しています。既に個々の問題に対して様々な取り組みも行われており、白紙の状態からデザインをし直せるという訳ではありませんが、だからといって個別対応に任せるのではなく、全体のあるべき姿・アーキテクチャを策定した上で効果が見込めるものから順次実現していくことが必要でしょう。

そのためには、個別の業界、特定の目的に対応する個別システムだけではなく、業界を跨いだり、それぞれを繋いだりする業際システムを構築し実現することが欠かせません。
NTTデータは、これまでにも、多様な決済端末に対応するキャッシュレスインフラ、貿易関連企業を繋ぎ、ブロックチェーンを用いて業務効率化とデータの正当性を確保した貿易プラットフォーム、医療データを匿名加工し医療・医薬品の研究開発に活用するシステムの構築など、様々な業界間や業際のシステムを実現してきました。

図4:NTTデータの取り組み事例

また、デジタル化の進展に伴って顕在化してきているリスクに対し、情報銀行のスキーム構築によるデータ権利の保護、パーソナルデータ流通プラットフォーム(My Information Tracer™)の構築によるデータの管理、ブロックチェーンを活用した取引相手やデータの信頼の確保にも取り組んでいます。

安心して、快適に、充実した暮らしができる新しい社会。その実現に向けて必要なのは、生活者の真の課題を解決するサービスデザインを行い、それを実現するための新たな制度・業務の設計と運用支援の実施と、社会全体で連携できる情報システムを構築していくことでしょう。
NTTデータは、これまで培ってきたノウハウと今後の新しい技術を掛け合わせ、社会の仕組みをトータルでデザインし、着実に実行し、継続的に改善していくことに努めてまいります。

プロフィール

株式会社NTTデータ
代表取締役副社長執行役員 法人・ソリューション分野担当
山口 重樹
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